不在の自宅に差押えが入った日のこと【実録】家にいないのにどうやって入ってきたのか
[[税金と国保を滞納し続けた僕の末路【実録】自宅差押えに至るまでの全記録]]
見慣れない封筒と「差押調書」を見つけた瞬間
ある日、先に帰宅した同居人から電話がかかってきた。
同居人「なんか財産差押えって書いた書類がテーブルの上に置いてあるねんけど。説明して」
僕「え?どういうこと?そんな封筒、家に置いてないねんけど」
最後に家を出たのは僕だ。家のテーブルにそんな書類を置いて出た覚えはない。差押え関係の書類は以前から届いているが、そんな大事な書類をわざわざテーブルの上に置いて家を出るようなことはしない。
意味がわからない。「とりあえず家に帰る」とだけ伝えて電話を切った。
帰宅したら、同居人はいつも通り夕食の支度をしていた。テーブルの上を見て、目を疑った。見覚えのない封筒と、「財産差押え」に関するA4の説明用紙。その封筒には「差押調書」と書かれた紙が入っていた。
中身を確認する前に、まず聞いた。
僕「これ、あなたが郵便受けから取ってきて、ここに置いたわけじゃないん?」
同居人「そうやで。家に帰ったら、もうここにあった」
僕「いや、この封筒、俺は知らんねん。俺は置いてないねん」
同居人「え?どういうこと」
少し考えて、すぐに分かった。
──ついにその日が来たか。
自宅内に強制的に立ち入って、家財を差し押さえしていく「家屋内の差押え」。頭の中でその言葉がよぎった。
正直、「いつかこうなるんじゃないか」とは思っていた。借金は10年以上返さずに放置しているし、国民健康保険料と税金も3年以上滞納している。特に税金や国民健康保険料の滞納はまずい。どこかのタイミングで自宅に入られてもおかしくない。そう思って、半分覚悟もしていた。
ただ、それは「立ち会いがある状態」をイメージしていた。まさか、不在中に鍵を勝手に開けて入ってきているとは思っていなかった。
誰もいない家にどうやって入ったのか?当時の僕の疑問
「もしかして本当に入られたのか?」
そう思って、家の中を見渡してみたら、あるはずの物がいくつか消えていた(何がなくなっていたかは後述する)。
ここで初めて、「あ、本当に入られてる」と気づいた。
僕も同居人も、帰宅した時点では物がなくなっていることに気づいていなかった。家に入られたことにすら気づいていなかった。同居人は帰宅してから30分くらいは普通に過ごしていたらしい。
「そんなバカな。そんなこと、もっと早く気づくでしょ」
と、たぶん画面越しのあなたは思うんじゃないだろうか。
おそらく、多くの人がイメージする“自宅差押え”は、
- タンスは開けっ放し
- 引き出しは全部出されている
- 部屋は荒らされたようにグチャグチャ
みたいな「ドラマで見る光景」だと思う。僕もそうだった。
でも現実は違った。自宅内は本当にきれいで、荒らされた形跡はほとんどなかった。潔癖気味の同居人ですら気づかなかったくらいだ。
それくらい、丁寧に家に入り、丁寧に財産を探し、丁寧に元に戻して出ていったのだろう。家中の細かいところまで調べられていたはずだ。つまり、「どこかに隠しておけばバレない」というレベルの話ではない。
気づいたら無くなっていた物たち(趣味・仕事道具)
少し落ち着いてきたので、「何がなくなっているのか」を一つずつ確認していった。
なくなっていたのは、主にこのあたりだ。
- カメラ
- マイク
- 趣味のロードバイク用の室内ローラー 2台
- ブランド物のネックレス
- ロードバイク用品をいくつか
押し入れの中からもいくつか物がなくなっており、やはりかなり丁寧に物色された上で、元に戻して出ていったのだろう。家中の細かいところまで探した形跡がある。
差押調書のリストを見る限り、
- メルカリや競売などで売却したときに
- 確実に値段がつきそうなもの
を中心に持っていっている印象を受けた。ブランド物のネックレスは持っていかれていたが、無名ブランドの指輪は残されていた、というあたりが象徴的だ。
逆に、意外と残してくれていたものもある。
- ロードバイク本体
- パソコン
- Apple Watch
などだ。
パソコンや Apple Watch、ロードバイクは明らかに換金性が高い。差押えされてもおかしくないのに、なぜか残されていた。
おそらく、市役所側は僕の仕事や収入源についてある程度把握している。だからこそ、
- パソコンや Apple Watchなどは「仕事道具」
- ロードバイクも「仕事や収入に関わる道具」
と判断して、敢えて残したのだろう。
[[自宅差押さえで実際に持って行かれた物と残してくれた物]]
この記事でも書いているが、差押禁止財産というものが法律で決まっていて、
- 仕事をするために最低限必要な道具
- そして他人の財産
は差押えできないことになっている。
ただし、ここで大きな問題が一つある。
カメラやマイクは、動画制作を仕事にしている僕にとって、完全に「仕事道具」だ。これを持っていかれてしまったことは、本当にショックだった。しかも、翌日にはそのカメラを使う仕事が入っている。
「明日の仕事、どうするの?」
頭の中でそう自問しながら、冷や汗だけが出ていた。
同居人の物が持っていかれたこと
さらに困ったことがあった。
僕の財産だけならまだしも、同居人の物まで持っていかれていたのだ。特に、ロードバイク関係の高額なアイテムが差押えされていた。同居人は相当ショックを受けているようだった。いや、それが普通だと思う。
先ほども書いたように、本来は「他人の財産」は差押えできない。これは法律で決まっている。
- 他人の財産は差押えの対象外
- 差押えできるのは、原則として「滞納者本人の財産」
だと、事前に自分なりに調べて理解していた。
にもかかわらず、現実としては「同居人の財産」まで持っていかれていた。これは完全に予想外だったし、「え、こんなことまで実務上は起こるの?」という驚きがあった。
ただ、僕が不在の中で差押えが行われたこともあり、
- 現場では誰の物か確認できなかった
- 家にある高額そうな物は「とりあえず差押え」の対象になった
ということなのだろうと想像がつく。
とはいえ、そのまま黙っているわけにはいかない。
- 仕事道具は本来差押え禁止財産
- 他人の財産も差押え禁止財産
この2点を軸に、しっかり抗議をすれば、少なくとも同居人の物は返してもらえるはずだ。そう考えて、その日の夜から一気に法律や差押えの実務について調べ始めた。
とは言っても、自宅に帰ってきたのは金曜日の夕方18時。市役所は当然閉まっている。問い合わせをしようにも電話は繋がらない。
さらに、翌週の月曜日は祝日だった。実際に市役所に連絡できるのは、火曜日まで待たないといけない。
怒り・情けなさ・罪悪感がごちゃ混ぜになった夜
その三日間は、正直まともに眠れなかった。
- もしかしたら仕事道具は帰ってこないんじゃないか
- 仕事道具が戻らなかったら、これからどうやって売上を上げて返済していけばいいのか
- 同居人の財産が、そのまま戻ってこなかったらどうしようか
そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回っていた。
その週末には、すでに撮影の仕事が入っていた。どうしてもキャンセルしたくなかったので、急遽カメラをレンタルして対応した。
なんとかその仕事は無事に終えた。けれど、毎回レンタルで乗り切れるほど余裕はない。
- 仕事道具は、どうしても戻ってきてほしい
- 同居人の財産については、きれいに返還してもらわないと、本当に頭が上がらない
……いや、「頭が上がらない」どころじゃない。信頼を失ってもおかしくない出来事だ。
そもそも不在中に勝手に入って物を持って行っていいの?
家が不在。誰もいない状態の家に、勝手に入って、勝手に財産を持っていく。そんなことが法律的に許されているのか?
その時の僕は、
- 市役所への怒り
- ここまで来るまで放置してきた自分へのふがいなさ
- 同居人を巻き込んでしまった罪悪感
そういった感情がごちゃ混ぜになっていて、正直、何をどう感じればいいのか分からない状態だった。
特にキツかったのは、
- 同居人の物まで持っていかれていたこと
- そして、その現状を同居人に説明しなければならなかったこと
この2つだ。
とはいえ、取り乱していても状況は変わらない。冷静になって考えるしかない。
- どうやって家財を取り戻すか
- どうやって仕事道具と同居人の持ち物を取り戻すか
週末の間、ひたすらスマホとPCで検索し続けた。
- 差押え禁止財産
- 第三者所有の財産
- 差押えの解除手続き
- 市役所との交渉
などについて、必死に調べた。
「週明けの火曜日に電話をして、必要な書類を揃えて持っていけば、差押えを解除してくれるはず。解除してくれなきゃおかしい」
そう信じながら、ギリギリのメンタルで週末を過ごした。
ちなみにこの同居人の物については、後日、市役所とやり取りをして 一部は返してもらうことができた。
ただし、そこに至るまでには、
- 所有者が同居人であることを示す証拠を揃えたり
- 何度も説明に足を運んだり
かなり消耗するプロセスがあった。
一方で、僕の仕事道具であるカメラとマイクは、最終的に差押え解除は叶わなかった。
[[同居人の物まで差押えされたときの話【実録】第三者所有財産と返還請求のリアル]]
[[仕事道具が差押えされて、帰ってこなかった話]]
この2つの記事で、同居人の物の返還交渉と、仕事道具が戻らなかった話を詳しく書いているので、興味があればそちらも読んでほしい。
この体験から、まず読んでほしい関連実録(内部リンク)
ここまで読んでくれたあなたは、きっとどこかで
「これ、自分も他人事じゃないかもしれない」
と感じているかもしれない。
もし今のあなたが、
- 税金や国民健康保険料を何ヶ月も払えていない
- 差押え関係の封筒が何通も来ている
- 同居人や家族に言えないまま、時間だけが過ぎている
という状態なら、次の実録も続けて読んでほしい。
- [[税金と国保を滞納し続けた僕の末路【実録】自宅差押えに至るまでの全記録]]
- [[借金と税金・国保を両方滞納している人が、どれから優先して払うべきか]]
そして、
- 「もう自分だけでは整理しきれない」
- 「どこから手をつけたらいいか分からない」
と感じているなら、
- [[借金・滞納はどのタイミングで専門家に相談すべきか【状況別チェックリスト】]]
この3本が、
- 自分はいまどの地点に立っているのか
- この先なにから手をつけるべきなのか
を考えるスタートになるはずだ。
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